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第714話

Auteur: 宮サトリ
「入るな」

その声は、必死に抑制しようとしているのがわかるほど、荒い息遣いが混ざっていた。

彼は今、浴室の中であれをしている可能性が高かった。

弥生は思わず下唇を噛んだ。

今すぐドアを蹴り破ってでも引きずり出したい気持ちだった。

だが、ぐっとこらえ、ドア越しに声をかけた。

「......冷水だけで十分だからね。中で変なことしないでよ」

返ってきたのは、水音に紛れた低くかすかな吐息だった。

「瑛介、私の話、聞こえてるの?」

「瑛介!」

どれだけ呼んでも、返事はなかった。

完全に無視を決め込んでいるのか、あるいは今それどころではないのか。

弥生はどうしようもない苛立ちを覚えたが、呼び続けても意味がないと悟り、渋々諦めた。

彼女はリビングへ行き、瑛介が使ったコップをキッチンで洗い、ついでに子供たちの様子を見に行った。

二人ともぐっすり眠っており、何事もなかったようで、弥生はようやく少し安心した。

数分後、弥生は再び浴室のドアの前に戻り、軽くノックをした。

しかし、中から聞こえるのは相変わらずの水音で、しかも彼は中で完全に居座っている様子だった。

耳を澄ませる
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